こんにちは、みずきです。
今回は先日発売された、Linkedin代表・村上臣氏の「転職2.0」の要約と感想を紹介します。
この書籍は発売されるやいなや、NewsPicksや週刊東洋経済など、さまざまなメディアで紹介されて話題になりましたね。いろいろとすでに要約や解説記事がありますが、僕の視点からもこの本を解説してみようと思います。
全体の要約に加えて、特にここが面白い!という部分を熱く解説してきますよ!
全体の構成
まずは全体の構成から見ていきましょう。本書は下記のように第1章から第7章で構成されていて、約290ページの書籍です。
章 | 内容 |
---|---|
第1章 | 望み通りのキャリアを手に「転職2.0」とは? |
第2章 | 自己を知るー「情報収集」から「タグ付けと発信」へ① |
第3章 | 自己を高めるー「情報収集」から「タグ付けと発信」へ② |
第4章 | 業界を見極めるー「スキル思考」から「ポジション思考」へ |
第5章 | 会社を見極めるー仕事は「会社」でなく「シナジー」で選ぶ |
第6章 | 広くゆるいつながりをつくるー「人脈づくり」から「ネットワークづくり」へ |
第7章 | 転職を考えることは人生を考えること |
本書では、従来型の多少の妥協を伴うような転職を「転職1.0」と位置づけており、そこから自分が望むやりがいや年収などが手に入る「転職2.0」にどのように考え方をシフトしていくべきなのかが論じられています。
そして、その「転職2.0」に必要なるものが次の4つだと解説されています。
- 自己を高めること
- 業界を知ること
- 会社を知ること
- ネットワークをつくること
それでは、1つずつご紹介します。
①自己を高めること
まず1つ目は、自己を高めることです。
ここで最も重要になるのが「タグ付け」という作業になります。ちなみに、この「タグ付け」というキーワードが本書ではかなりの回数で登場します。
このタグは、「ポジション(役割)」「スキル」「業種」「経験」「コンピテンシー(ハイパフォーマーの行動特性)」のくくりで分類が可能と解説されています。
例えば、僕の場合は「法人営業」というポジションに紐づくタグや、「テレアポスキル」などのスキルに関連するタグ、「HR(人事)の業界で丸2年間勤務」という経験のタグがつくようなイメージです。
基本的にはタグの掛け合わせで市場価値が決まり、そして「タグの強化=市場価値の向上」につながっていきます。
さらにタグは市場に認知されることで、どんどん有利になるので積極的に発信していくことも大事だといいます。自分のタグを棚卸しして、発信すれば企業からの直接オファーを呼び込むことができるようになるからです。実際に、著書の村上氏が代表を務めるリンクトインではリクルーターが「タグ」で人材を探し出すこともあるそうです。
それでは自分の「タグ」のをどのように見つけていくのが良いのでしょうか・・・?
続いて、タグの見つけ方を押さえておきましょう。ここがなかなか興味深いポイントです。
自分のタグの見つけ方
自分のタグを見つけるためのフレームワークは「分解」と「解放」の2つがあります。
急になんじゃそりゃって感じですが、1つずつ解説していきます。
1つ目の「分解」は、自分のタグを見つけるために職務経歴書を書くという作業を行なっていきます。
ネットで見つけたテンプレートを活用してもいいので、まずは自分の職務経歴書を書いてみて、その後に「ポジション」「スキル」「業種」「経験」「コンピテンシー」の分類に沿ってタグを洗い出していきます。ちなみに、転職の面接では自分のタグに具体的な業務でのエピソードに交えて、アピールすることができれば非常に効果的にもなるそうです。
2つ目の「解放」は、自分以外の外部の視点から「タグ付け」を行います。
解放の具体的な方法としては、他己紹介を通じてヒントを得る方法や、転職の検討の有無に関わらず1度転職サイトに登録したり、時には実際に面接を受けたりして、第3者の視点から自分のどんな要素がタグとなりうるかを考えてみることなどが紹介されています。
なかでも面白いと思ったのが、外部視点から自分のタグを評価してもらうために、積極的に転職エージェントの人と接触する機会をつくるという手法です。これは確かに一理あると感じました。思いがけず評価が低いとダメージが大きそうですが・・・(笑)。
このように、タグの見つけ方は「分解」✖️「解放」のフレームワークで進めていきます。
本書では巻末にタグの一覧をまとめた「タグ一覧表」も付いてくるので、自分自身のタグを見つけやすくなるはずですよ。
タグの効果的な使い方
自分のタグを魅力的なものにし、市場価値を高める方法についても解説されています。
とくに、タグのうまく掛け合わせたり、意図的に新しくホットなタグを身につけたりすることで、「いそうでいない人材だけど、多くの企業がほしいと思う人材になる」という考え方は今後さらに重要になってくると感じました。
昨今、多くの企業が求める人材としてABC人材(AI、ビッグデータ、クラウドの頭文字を取ったもの)という言葉もキーワードになっているそうですね。
また、1つ1つのタグは時代の流れとともに必ず陳腐化するので1つのタグに固執しすぎることはリスクが高いとも指摘されています。
②業界を知ること
2つ目は、業界を知ることです。
本書では「業界選び=ポジション選び」だと定義されており、その目指すべきポジションを明確化する「ポジション思考」という考え方の重要だといいます。
これは目指すべきポジションが先にあり、そのためのスキルを得たり、そのための会社に転職したりする思考のことで、従来のやみくもに自己のスキルを身につけようとする「スキル思考」と相対する考え方です。
このポジション思考なら、異業種への転職もそこまで難しくはないということになります。同じタグを必要とする業種・職種は複数あるからです。どの業界も「ポジション」という横串でみれば、異なる業界との繋がりを見出せます。
業界選びのフレームワーク
本書ではその業界選びのフレームワークとして、「業界を固定する」と「ポジションを固定する」の2つが紹介されています。なお、1回の転職で業界もポジションも変わるような転職は村上氏もあまり推奨いません。
つまり、転職を考えるときは「同じ業界だけど違うポジション」「同じポジションだけど違う業界」のどちらかが良いということになります。
同じ業界のなかで違うポジションを狙っていく場合は、需要のある“アツいポジション”を積極的に狙うことをおすすめします。大事なことは、1回の転職だけですぐに熱いポジションが取れなくても、二手先くらいまでのポジションとキャリアパスを描くことです。今後のキャリアパスがしっかりしていれば目先のポジションが仮にアツくなくても自分には欠かせないアツいポジションになります。
目指すポジションがアツいかどうかは、基本的に需給のバランスで決まります。定期的に求人情報をチェックすることで世の中のアツいとされるポジションは確認できます。
一方で同じポジションで違う業界にいく場合は、市場価値を高められるタグを得られるかどうかという視点が大切になります。異業種への転職は不慣れなことや新しく覚えることが多く大変なことも多いですが、新しいタグを得る機会はグッと増えるはずです。市場価値を高めるためにはやはり伸びている業界へチャレンジするという選択肢が手堅いです。
どの業界が伸びるかを知る
本書で提案されている、どの業界が伸びるかを見極める方法がユニークかつシンプルで興味深いので紹介しておきます。
それは、業界1位の有価証券報告書のサマリー部分だけを読むというもの。この数ページを読むだけでもその市場全体の状況や今後の伸びしろ、今後の課題などが見えてくるといいます。業界トップの有価証券報告書を読めば、ある程度の業界研究ができるようです。
転職サイトの記事や、企業の求人ページは基本的にバイアスがかかったものが多いですが、この有価証券報告書はステイクホルダーにあまねく開示されるものなのでリスクや弱みも記述されることが多いです。そうした部分を読み込むだけでも相当な情報をゲットすることはできるとの考えからこの手法が有効だと解説されています。
③会社を知ること
続いて3つ目は、会社を知ることです。
ここでは「シナジー」がキーワードになります。
これまでの転職はブランドで「会社」を選ぶことが多かったのですが、それは次なる転職の可能性を狭める可能性があるので避けるべきだと解説されています。
例えば、「有名な会社で働くこと」に価値を置いている人は、転職をする際も有名な会社を選ぼうとします。有名な会社で、かつ自分に相応しいポジションが用意されている確率はそこまで高くなく、転職のハードルが当然のように高まります。
また「今よりも有名な会社に転職しよう」と考えている人も危険だと警鐘を鳴らします。有名な会社で働くことに価値を置いている時点で、判断軸を他人に委ねていることになるからですね。
この「会社で選ぶ」に取って変わるのが「シナジーで選ぶ」ということです。シナジーで会社を選ぶというのは、自分がいかにその会社で力を発揮して成果を出せるかという視点を持つことです。言うならば、個人と会社がお互いに必要な役割を果たして、「相乗効果=シナジー」を生み出していくということになります。
これまでは「会社が人をどう活かすか」という視点ばかりで議論され、「従業員が会社をどう利用するのか」という視点は希薄でした。これからは会社と従業員がフェアな関係を築き、お互いにWINーWINの関係を築くという観点が重要になってくるはずです。
良いシナジーが得られる会社とは
それでは、どのような会社で働くとより良いシナジーが得られるのでしょうか。
本書ではカルチャーフィット(会社文化への適応)が、良いシナジーを得るための重要な要素として挙げられています。
最近はホームページやSNSなどを通じて、自社のカルチャーや雰囲気を魅力的に発信する企業も増えています。そうした情報源から垣間見える情報はしっかりとキャッチアップしておきましょう。カルチャーに合う・合わないは、良い・悪いということではなく、自分には一体どんなカルチャー合うのかを認識することがやはり大切です。
人によって大企業でシナジーを出しやすい人、ベンチャーのほうがシナジーを発揮しやすい人がいます。決められた役割の中でコンスタントに仕事に取り組みたい人は大企業向きかもしれませんし、役割を超えていろいろと自分で進めていきたいという人はベンチャー向きの可能性が高いです。
ちなみに本書では、「成長しているけど、それほど目立ってないベンチャー企業」がシナジーを発揮しやすい企業としておすすめされています。成長しているものの、そこまで有名ではないから優秀な従業員もそこまで多くなく、自分の成果を出しやすい環境にあることが多いからだといいます。これはかなり納得してしまいました(笑)。
④ネットワークをつくること
最後の4つ目は、ネットワークをつくることです。
人生100年時代とも言われ、今後1人あたりの転職回数は必然的に増えていくことが予想されます。そうしたなかで、ゆるいつながりを広範囲にひろめていくネットワークの形成がこれまで以上に大切になってきます。
つながりを広めていくときは、まずは同業界にいる他社の人や関連業界の人など、自分と近いポジションにいる人から広めていくのが良いとのことです。
ネットワークを広げていくことで「○○株式会社が□□の人を採用したがっている」という話題だとか、リファラル(紹介)ベースの転職に巡り合う可能性が高くなります。ネットワークをつくっていくことで、仮に失敗しても誰かに拾ってもらえたり、行き詰まった時にそっと手を差し伸べてれる人も出てくるかもしれません。
さらに、広くゆるいネットワークを構築することで、ネットには載っていないリアルな声を拾いやすくなるはずです。ある会社の内情をよく調べるためには、その会社で働く本人にその会社について直接聞くのが一番です。
業界をまたいでネットワークをつくれれば、どの業界で自分のスキルを活かすチャンスがあるかも次第にわかるようになり、ネットワークを通じた転職も行いやすくなるでしょう。
人付き合いは苦手だからとか、積極的に社外の人と関わるのは性に合わないとか、そういうことを言っているうちに、どんどん取り残されてしまう可能性が高くなっていくような時代になるのかなと感じました。
まとめ:これからの「働き方」本です
最後に本書のまとめを書こうと思います。
この本を読んで感じたことは、「自己を知る=タグ付け」「業界選び=ポジション選び」「会社選び=シナジー」「人脈づくり=ネットワーク」の4つが大切だということです。
本書で重要視されている考え方です。
今や終身雇用などの日本型の雇用制度は崩壊しつつあり、「自分でキャリアをつくる時代」が迫っています。
そのヒントが、この上記の4つになるのではないでしょうか。僕はそう思いました。
この「転職2.0」転職に役立つ良著な転職本であることは間違いないのですが、もっと広域の部分な働き方全体の考え方をシフトさせてくるような本だと感じました。
そうした観点からすると、必ずしも転職を希望している人だけではなくて、とくに若手の世代の人にはぜひ読んでいただきたいです。この本に書かれていることは若いうちから知っておくか、知らず知らずのうちにどんどん歳をとってしまうかでは大きな差が生まてくるはずです。
ぜひ、これからのキャリアを考えるときにおすすめしたい至極の一冊です。